葬儀信託とは、自分の死後に行われる葬儀のための費用を、生前に信託銀行などに預けておく仕組みです。生前契約の一種として近年注目されており、特に身寄りが少ない方や、家族に負担をかけたくないと考える方に選ばれています。ただし、利用するにあたってはメリットだけでなくデメリットも理解しておくことが大切です。
葬儀信託の大きなメリットは、費用の確保と事前の段取りができる点です。たとえば、生前に葬儀の規模や内容を決めておくことで、残された家族は葬儀社選びや支払いに頭を悩ませることなく、故人の意向に沿った形で送り出すことができます。また、信託された資金は契約時に指定された葬儀のためにのみ使われるため、他の相続人が勝手に使うことができないという安心感もあります。
もう一つの利点は、身寄りがいない方でも希望通りの葬儀が実現しやすい点です。たとえば、親族との関係が疎遠な高齢者が、自身の葬儀を自分で設計し、信託先としっかり取り決めておくことで、亡くなった後に慌てて対応されることを避けられます。
一方で、デメリットも存在します。たとえば、信託契約を結ぶ際には契約手数料や管理費用がかかることが一般的です。信託会社によっては、契約時に数万円程度の初期費用や年額の管理料が発生する場合もあります。また、途中で契約内容を変更したり解約したりする場合には、手続きが煩雑になることもあります。
さらに注意が必要なのは、信託先の選定です。万が一、信託先の企業が倒産した場合、預けた資金が十分に保護されないリスクもあります。信託保全制度があるか、第三者機関との連携があるかといった安全面を確認することが不可欠です。
本コラムでは、葬儀信託のメリットとデメリットを解説しました。事前に葬儀費用を確保できる安心感や、家族への負担軽減といったメリットがあります。一方で、手数料や管理費の負担、途中解約の手続き、信託先の信用性といった点には注意が必要です。制度の特徴をよく理解し、自分の目的や状況に合った活用方法を見極めることが、後悔のない選択につながります。
